ChatGPT上で性格の違うキャラクターにインタビューをしたら個性的だった

ChatGPT上で性格の違うキャラクターにインタビューをしたら個性的だった

Clock Icon2023.03.29

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こんにちは。デザイナーのスギヤマです。CX事業本部に所属し、普段はモバイルアプリケーションやLINEアプリケーションの開発に従事しております。

弊社はBtoBtoC形態で、受託の案件を遂行する機会が多く、直接エンドユーザーにインタビューをするのがなかなか難しい状況や、時間がかかってしまうケースが存在します。その場合は、社内や別のコミュニティなどで近しいユーザーに協力をお願いし、インタビューやテストを行うことがあります。

しかし、非常に短期間な状況や、限定された状況でユーザー像を見つけ出したり、ヒントを得たりする必要があるケースもあります。そこで、ChatGPTを使用して様々なキャラクターを学習させ、回答の変化を観察することにしました。

やること

キャラクターのプロフィールを作成

既存のサービス(某スーパーマーケット)のユーザー情報をもとに、4名のキャラクターを作成しました。

確定している実際の情報は、サービスの利用地域や主な年齢層性別サービスの利用地域、主な利用シチュエーションなどです。これらを参考にし、少しずつ年齢や性別、居住地、性格を変化させながらキャラクターを作り上げました。 性格に関しては、「MBTI診断(16タイプ診断)」の結果を指標にしました。これは外向型・内向型、感覚型・直観型、思考型・感情型、判断型・認知型の4つの二分法を組み合わせ、16の性格タイプに分類したものです。

違ったキャラクターに同じ質問を投げかけることで、回答の変化を観察します。

達成したいこと

A、B、C、D、4名の違った個性を持つキャラクターが同じ質問に対して、どの程度個性的な回答を出してくるかを観察します。また実際の人間であるユーザーEさん(茶色)相手の回答と比較してみます。

複数ロールの会話再現についてはこちらの記事も御覧ください

参考:ChatGPTに複数ロールを設定してリーンキャンバスを作ってもらった

制作したキャラクターたち

実際のインタビュー情報や細かいユーザーデータを元に制作をしていないので、便宜上ペルソナではなくキャラクターと呼ぶことにします。MBTI特性は4つの大きく傾向が違うものに設定しました。

A:世田谷区にお住まいの佐藤さん

  • 名前 : 佐藤道子
  • 年齢 : 45歳 女性 既婚
  • 仕事:専業主婦
  • 家族:夫、長男14歳、犬
  • 夫の仕事:都内食品メーカー勤務
  • 住居:東京都世田谷区桜新町
  • MBTI特性:ISFJ型(擁護者)
  • 性格:おだやかで聡明。すこし臆病。
  • 趣味:料理、犬の世話

B:高円寺にお住まいの及川くん

  • 名前 : 及川俊也
  • 年齢 : 28歳 男性 未婚
  • 仕事:ウェブデザイナー
  • 家族:一人暮らし 彼女なし
  • 住居:東京都杉並区高円寺
  • MBTI特性:ESFP型(エンターテイナー)
  • 性格:新しいものが好き。ネットリテラシーが高い。やや軽薄。
  • 趣味:麻雀、喫煙

C:目黒区にお住まいの小林さん

  • 名前 : 小林秀明
  • 年齢 : 62歳 男性 既婚
  • 仕事:保険会社勤務
  • 家族:妻のみ 子供は独立
  • 住居:東京都目黒区中根
  • MBTI特性:ISTJ型(管理者)
  • 性格:正直者で安定が好き。世間の評判を気にする。
  • 趣味:読書、将棋

D:白金台にお住まいの橘さん

  • 名前 : 橘靖子
  • 年齢 : 59歳 女性 既婚
  • 仕事:経理
  • 家族:夫のみ 子供なし
  • 夫の仕事:会計士
  • 住居:東京都港区白金台
  • MBTI特性:ENTJ型(指揮官)
  • 性格:豪快で細かいことを気にしない。判断に容赦がない。
  • 趣味:旅行、ヨガ

 

E:岩本町にお住まいの武田さん(実際の人間)

  • 名前 : 武田沙奈(仮名)
  • 年齢 : 29歳 女性 既婚
  • 仕事:広告デザイナー
  • 家族:夫、長女(1歳)
  • 夫の仕事:保険会社勤務
  • 住居:東京都千代田区岩本町
  • MBTI特性:ESFP型(エンターテイナー)
  • 性格:細かいことは気にしない、落ち着きがない
  • 趣味:散歩、美術鑑賞

imaged by Adobe Stock

ChatGPTを使ってインタビューしてみる

#命令

いまから私が4人のユーザA、B、C、Dに同じ質問をします。

それぞれのユーザーになりきって回答をしてください。

 

#制約条件

・一つの質問に対して一つの答えを返してください。

・MBTI特性と性格を踏まえて回答してください。

・英語で考えて日本語で出力してください

 

#ユーザー詳細

・ユーザーA

名前 : 佐藤道子

年齢: 45歳 女性 既婚

仕事:専業主婦

家族:夫、長男14歳、犬

夫の仕事:都内食品メーカー勤務

住居:東京都世田谷区桜新町

MBTI特性:ISFJ型(擁護者)

性格:おだやかで聡明。すこし臆病。

趣味:料理、犬の世話

 

・ユーザーB

名前 : 及川俊也

年齢: 28歳 男性 未婚

仕事:ウェブデザイナー

家族:一人暮らし 彼女なし

住居:東京都杉並区高円寺

MBTI特性:ESFP型(エンターテイナー)

性格:新しいものが好き。ネットリテラシーが高い。やや軽薄。

趣味:麻雀、喫煙

 

・ユーザーC

名前 : 小林秀明

年齢: 62歳 男性 既婚

仕事:保険会社勤務

家族:妻のみ 子供は独立

住居:東京都目黒区中根

MBTI特性:ISTJ型(管理者)

性格:正直者で安定が好き。世間の評判を気にする。

趣味:読書、将棋

 

・ユーザーD

名前 : 橘靖子

年齢: 59歳 女性 既婚

仕事:経理

家族:夫のみ 子供なし

夫の仕事:会計士

住居:東京都港区白金台

MBTI特性:ENTJ型(指揮官)

性格:豪快で細かいことを気にしない。判断に容赦がない。

趣味:旅行、ヨガ

 

私:明日の予定を教えて下さい

ユーザーE(武田沙奈さん ※実際の人間):

明日は天気がよかったら子供を連れて公園に行く予定です。公園にいったあとはスーパーで夕食の買い出しをすませ、子供が昼寝をしている間に食事の準備をします。ご飯やお風呂のお世話がおわったら自分の時間を楽しみます。

ChatGPTの4人は要件をそのまま取り入れ、要約した文章を出力してきました。これはインタビュー結果としては使い物になりませんね。しかし武田さんも趣味に即した回答をしてくださっていますのでパッと見た雰囲気では違いがわからないかもしれません。質問を変えてみましょう。

 

私:普段よく使うアプリはありますか

ユーザーE(武田沙奈さん ※実際の人間):

Twitterをよく使います。育児情報をネットで検索してもタイムリーな情報が得られないので、バズった育児投稿を追っていました。

ChatGPTの4人は職業欄や趣味を元に使用アプリを出してきました。しかし、実際の武田さんはアプリはアプリでもSNS。少しカテゴリが違います。

 

私:普段どういったお店にいきますか。そこではどんなものを買いますか?

ユーザーE(武田沙奈さん ※実際の人間):

子供関連のお店が多いです。赤ちゃん本舗や西松屋は安くてよく利用しています。親戚からお祝いをもらったときや、自分たちへのプレゼントは百貨店のギフトコーナーに行きます。自分たちと同世代の人の出産ギフトもよく購入しました。

ChatGPTの4人がそれぞれタイプの違う回答が出てきたのは良かったです。高円寺にお住まいの及川くんはネットショッピング、白金台にお住まいの橘さんは高級志向、と個性的です。しかし、人間である武田さんのインタビューで出てきた回答は、固有名詞や状況もあげられ、情報が仔細です。ChatGPTでも、事前に「最近、同世代の友人が出産をしている」という情報を入れられれば、同様の回答が導けるかもしれませんが、こういった細かい情報こそが、インタビューの会話の中でみつかることも多いと感じます。

 

私:有難うございました。普段、食材を買う時はどこに行きますか?

ユーザーE(武田沙奈さん ※実際の人間):

すぐ欲しいものは近くのまいばすけっとを利用していました。歩いて150mくらいです。週末、夫と行くときにはLIFE、オリンピックなどの大きいスーパーへ行きます。

こちらもChatGPTの4人がそれぞれタイプの違う回答が出てきました。キャラ付けができている、という印象を受けます。

 

私:そうなんですね。スーパーマーケットに行くときの持ち物を教えて下さい

ユーザーE(武田沙奈さん ※実際の人間):

子供のお出かけ用品です。おむつ、汚れたときの着替え、子ども用の飲み物や食べもの、抱っこひもを持っていきます。あとは財布、鍵、ケータイです。買い物メモはわざわざ持っていくことはありません。

こちらもChatGPTの4人が少しだけ回答を変えながら出力してきました。ただ本当に全員が買い物リストをつかうのだろうか?と疑問が残ります。実際に武田さんはリストを使わないでその場で安いものを買う、と回答が返ってきました。

 

私:スーパーマーケットで買い物が終わったあと、レジでの支払いはどのような方法で行いますか?

ユーザーE(武田沙奈さん ※実際の人間):

現金が多いです。自分は、カードだとすぐにお金をつかってしまう癖があるからです。支出はアプリで管理をしています。

やや保守的な佐藤さんと小林さんが現金。革新的な及川くんと橘さんがクレジットカードという結果に。また同じクレジットカードでも、便利さよりお得感を重視するタイプと、支払いの簡単なタイプとに別れ、ニュアンスの違いが現れました。武田さんは「お金を使ってしまうくせがあるからこそ、現金を使う」といった回答で、同一MBTIである及川くんとは違う回答となりました。

 

近くのスーパーマーケットで使用できる、便利なアプリがダウンロードできるとします。あなたはどう感じますか?

ユーザーE(武田沙奈さん ※実際の人間):

どういう機能があるかによって、使うかどうか迷います。アプリなどでこれが安い、などがわかると入れてもいいかもと思います。レジでかざすだけでポイントをつけてくれるといった手軽なサービスもいいですね。

これはなかなかおもしろい回答だと感じました。個人情報、セキュリティに気をつけたいのが年長者の二人。及川くんは新しいサービスに前のめりで、キャラクターが反映されていますね。

 

あなたはそのアプリケーションの広告を見て興味を持ったとします。アプリケーションをダウンロードすると仮定したときに、どんなことに困るでしょうか?

ユーザーE(武田沙奈さん ※実際の人間):

通知が沢山くるような挙動は嫌です。プッシュ通知などはオフにしてしまいます。情報がごちゃごちゃして見つけづらいのが苦手です。

リテラシーが低そうな佐藤さんは使い方に不安があるようです。他の3人は機能の充実を期待しているようです。

番外編・キャラクターごとのストーリーの違い

以下は相乗りタクシーサービスを想定したテストです。サブスプリプション料金形態で、毎日最寄りの場所に行くと、タクシーを相乗りしながら出社できる、というのが大枠の流れです。

キャラクター

  • 高橋颯太さん
  • 32歳 独身
  • 都内メーカーの営業職
  • 年収600万
  • 川崎市在中
  • 夜遅くまで仕事をしていて平日は帰りが遅い
  • 休日は友人とフットサルをするのが楽しみ
  • 朝に弱い

 

  • 鈴木恵子さん
  • 43歳 独身
  • 都内メーカーの管理職
  • 年収1200万
  • 目黒区在中
  • 夜遅くまで仕事をしていて平日は帰りが遅い
  • 休日は友人とホームパーティーをするのが楽しみ
  • 朝には強いので、タクシーの中でも仕事をしたい

違った個性のキャラクターにおなじ指示を出してみると…

ユーザーが朝、家を出て、アプリケーションを使用して相乗りタクシーのサービスを使い会社に着くまでのストーリーを10工程で書いてください

高橋さんストーリー

※最初のセンテンスを見本として指示に入れています

鈴木さんストーリー

ユーザーのキャラクターによってかなりのストーリーの違いが現れました。ちなみに、鈴木さんのストーリーに対し別の指示もしてみます。

ありがとうございました。では相乗りしてきた他の乗客が気の合う女性客だった場合のストーリーを10工程で書いてください

すると、がらっと違ったストーリーが出力されました。

このように指示内容を変化させることで、ユーザーの視点の違いによる問題点を洗い出したり、仮設を立てたりといったことに利用できるかもしれません。たとえば、このサービスにおいては「相乗りする他ユーザー」によってサービスの質が大きく異なるのではないか、といった仮説が立てられます。

KeepとProblemとTry

Keep / 継続できそうなこと

  • 数秒から数分でタスクが出てくるのは本当に素晴らしい。特に1度の問いかけですぐに4つの回答が返ってくるのはかなり効率的です。
  • キャラクターによって、確かに回答の差はでました。適切な指示内容を設定することで、擬似的なインタビューは可能です。

Problem / 課題になりそうなこと

  • 性格をかなり変化させても、同一の回答が出ることがありました。参照元のデータに注意が必要です。
  • 基本的に中庸な回答を提供するため、実際のユーザーの情報に即した分析が必須です。

Try / やってみたいこと

  • 実際の人間のインタビューと、ChatGPTのインタビューあわせ技をしてみるのはどうでしょうか。これまでの観察を踏まえると、まだまだChatGPTだけのインタビューでは心もとないというのが実際のところです。ただ、十分な人数のインタビューデータが得られない場合や、別の視点や回答パターンを出してみたいといったケースで活躍できるかもしれません。人間とChatGPTの回答を比較することで、中庸的な発想と、人間独自の発想を比較しながらアイデアを拡散することができるかもしれません。

さいごに

ChatGPTを用いて、穏やかな性格や保守的な性格、新しいもの好きな性格など、多様なキャラクターにインタビューを行いました。その結果、回答に変化が見られました。

ただ、人間によるインタビューと比較すると、まだまだという印象があります。実際に対面で会話をすることで得られる情報は非常に豊富で、貴重なものです。

しかし、質問内容を変えたり、ストーリーとしての回答を得ることで仮説を立てたり、ChatGPT独自の使い方をすることもできそうです。それぞれの方法を単独で使うのではなく、組み合わせることで、より良い成果物が生まれる可能性があります。

また、ChatGPTの進化に伴い、将来的にはChatGPT上だけで、実際の人間にインタビューをするのと変わらないクオリティが実現するかもしれません。

 

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